当初、歳時記(歳事記)は、太陰太陽暦(旧暦)を基にした年中行事や四季の事物をまとめた物を指しましたが、江戸時代以降になると、俳句や俳諧の季語を分類し、解説等を加えた書物の事を指すようになりました。現在では、「食」や「暮らし」・「季節」といった様々な形で四季や行事を身近に楽しみ、感じてもらえるよう出版されています。今回は9月の歳時記をご紹介します。
【長月(ながつき)】
長月は9月の別名。諸説ありますが、「夜長月(よながつき)」を略したとする説が有力です。
その他、「稲刈月(いねかりづき)」→「ねかづき」→「ながつき」となった説、「稲熟月(いねあがりづき)」が短くされた説等があります。
【9月の行事など(2021年)】
1日:防災の日大正12年9月1日に関東大震災が起こり、多くの方が被災されました。
その時の教訓を忘れないために1日を防災の日とし、各地で大規模な防災訓練を行います。
7日:白露(はくろ)
厳しい残暑が落ち着き、本格的な秋の到来を告げる時期。
大気が冷え、植物に露が降りるころ。
9日:重陽の節句(ちょうようのせっく)
別名「菊の節句」と呼ばれる五節句のひとつ。
今では端午の節句や七夕といった他の節句が盛んですが、昔は1月から始まった五節句の最後を締めくくる行事として盛大に行われたそうです。
無病息災や長寿を祈って「菊酒」をいただきます。
20日:敬老の日
現在は9月の第3月曜日ですが、元々は9月15日でした。
聖徳太子が家族のいないお年寄りや病を患っている方に「悲田院」という場所を作ったのが9月15日とされており、そこから派生したのが敬老の日です。母の日や父の日は外国が発祥ですが、敬老の日は日本が発祥で、国が定めた祝日です。
21日:中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)
別名「十五夜」、「いも名月」と呼ばれ、収穫を祝う行事。
旧暦の秋は7~9月で、8月15日はちょうど秋の真ん中の日にあたる事から名付けられたとされ、芋類が収穫の時期を迎える事からいも名月となったといわれています。
また、翌月の13日を「十三夜」と呼び、月見をしました。十五夜と十三夜、どちらか一方しか見ない事を「片見月」といい、縁起が悪いとされています。
23日:秋分(しゅうぶん)/秋の彼岸(あきのひがん)
秋の彼岸のちょうど真ん中にあたる日を秋分といい、秋分と前後3日間を含めた7日間を「秋の彼岸」とし、お墓参りをして先祖を供養します。
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がありますが、これは秋分以降、日が短くなって寒さが増し、春分以降は日が長くなり暖かくなるので、季節の目安とされた事に由来します。
【9月の味覚】
里芋、いちじく、なし、秋なす、松茸さんま、戻り鰹、はぜ、いわし、昆布など
【重陽の節句】
重陽の節句は長寿祈願の行事で、中国に伝わる「奇数=良い事を示す数(陽数)」・「偶数=悪い事を示す数(陰数)」とする考え方が基になっています。奇数の中で一番大きな数は「9」。「9」が2回重なる9月9日を「陽が重なる日=重陽」としました。
菊の花は、仙人の地に咲き、長寿を授けるめでたい花として用いられるようになりました。
酒に菊の花びらを浮かべた菊酒や菊の花を使ったお浸し、酢の物、吸い物などをいただきます。
また旧暦の9月(現在の10月頃)は、栗の収穫時期でもある為、江戸時代からこの日に栗ご飯をいただく風習が出来たため、「栗の節句」と呼ぶ事もあります。
【おはぎとぼたもち】
「春はぼたもち 秋はおはぎ」という言葉があります。これは、春と秋のお彼岸にお供えする和菓子の呼び名です。名前が違うだけと思われがちですが、春の花、牡丹(ぼたん)にちなんだ「ぼたもち」は、収穫後時間が経ってかたくなった小豆の皮を裏ごして作った「こしあん」を使い、秋の花、萩(はぎ)にちなんだ「おはぎ」は収穫してすぐの皮が柔らかい小豆で作った「粒あん」を用いるところが多いようです。
新暦と旧暦では季節のズレが生じやすいので、新暦では出回っていない食材や植物もあります。
私達はあまり自然に影響されずに生活していますが、昔は自然現象が生活に大きく関わっていました。歳時記はそうした自然との付き合いの中で生まれた物ですので、季節を感じたい時は参考にしてみてください。
Text by さゆり/食育インストラクター
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