歳時記を知ろう 10月

歳時記を知ろう 10月

当初、歳時記(歳事記)は、太陰太陽暦(旧暦)を基にした年中行事や四季の事物をまとめた物を指しましたが、江戸時代以降になると、俳句や俳諧の季語を分類し、解説等を加えた書物の事を指すようになりました。現在では、「食」や「暮らし」・「季節」といった様々な形で四季や行事を身近に楽しみ、感じてもらえるよう出版されています。今回は10月の歳時記をご紹介します。

【神無月(かんなづき)】

神無月は10月の別名。
諸説ありますが、「神を祀る月」→「神の月」とされている説や10月は国中の神々が出雲大社に出かけて行くため、出雲(島根県)以外には「神がいない月」→「神無月」とする説が有力です。逆に、諸国の神々が集まる出雲では「神が集まる月」→「神在月(かみありづき)」と呼ばれています。神の無い月と書きますが、水無月(6月)と同様、「かんなづき」の「な」は連体助詞と呼ばれるもので、「~の」にあたるため、「神の月」という意味となります。

【10月の行事など(2021年)】

1日:衣がえ
中国の宮中では、旧暦の4月1日と10月1日に夏冬の服を入れ替える習慣がありました。
日本へは平安時代に伝わったとされます。
明治時代に新暦が使われるようになり、現在の6月1日と10月1日に夏冬の服を衣がえするようになりました。

8日:寒露(かんろ)
朝晩の寒さが増し、朝露が冷たいと感じるようになる頃。
寒くなって空気が澄み、晴天の日は夜空に浮かぶ月の姿がくっきり映し出されます。

18日:十三夜(じゅうさんや)
日本に元々あった風習で、栗や豆の収穫時期と重なるため、「栗名月」「豆名月」とも呼ばれています。

20日頃:恵比寿講(えびすこう)
神無月に出雲に出向かず、留守を任される恵比寿様や大黒様といった神様を祭る日。
旧暦の10月20日または11月20日、地域によっては1月10日に行うなど様々ですが、市が立ち、賑わいを見せる行事で、全国各地にある風習です。

23日:霜降(そうこう)
寒露の頃よりさらに朝晩の寒さが増し、霜が降り始める頃。冬本番までもう少しです。

【10月の味覚】

栗・柿・しめじ・さつま芋・里芋・落花生・むかご
ししゃも・秋鮭・かわはぎ・さば・ほっけなど

【十三夜】

昔は月に対して「優雅さ」「気品」の象徴という概念がありました。また、月は夜の明り取りや暦を知る上でも重要な役割を持っていました。
中秋の名月(今年は9月21日)にあたる十五夜は中国から伝わった行事が基になっていますが、十三夜は日本に元々あった月を愛でる風習です。旧暦の9月13日の夜を指すこの風習は、栗や豆の収穫時期と重なるため「栗名月」・「豆名月」とも呼ばれます。
作物の収穫を終える地域も多いため、無事収穫出来た事への感謝の意味も込められています。
十五夜と十三夜、どちらか一方しか見ない事を「片見月」といい、縁起が悪いとされました。十五夜はあまりスッキリしない天気が多いのに対し、十三夜は晴れる確率が高く、「十三夜に曇り無し」という言葉もあります。
十五夜のお月見をした方は、ぜひ十三夜の月も楽しんでみてはいかがでしょうか。


日本の風習は季節を大切にし、ともに歩む道しるべです。
ご家族や友人と行事をする際は意味合いを話しながら楽しむと、後世に風習が残っていくきっかけになります。
この「歳時記を知ろう」シリーズがそういった時に役立つと嬉しいです。

Text by さゆり/食育インストラクター

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